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Underground


この作り手は、新作が成功でも失敗でも見ねばならない作家の1人。


前作までは一般に「ドキュメンタリー」に分類される作品を撮ってきた監督だけど、今回は俳優が影のように依代に立って、地中世界と生身の人間との、かかわりの記憶をさぐってゆく。地中の岩肌にこまかな光の網の目が投影され、そこへ若い女があらわれて手の影をかかげる。女はさらに森の中で樹皮に身体をさらし、洞窟にちらばる人骨の破片を手に取る。こうした、土・樹との光と影を通じた交流を重ねながら、女は自身の身体をもって地中の物語を語り直そうとする。


20世紀初頭のモダニスム映画のような世界。しかしあるところで沖縄戦の〈ガマ〉の語り部が現れ、実際に沖縄の洞穴で起きた事件を語りはじめる。女が媒介していた土と人の物語は、さらに「歴史」を組み込んで複雑さを増す…。映画言語の拡張をもくろむこういう作風には、米国流の映画分析は役に立たない。


Underground (2024) dir. Oda Kaori 小田香『アンダーグラウンド』公式サイト


サウンドデザインには感想が分かれるのでは。確かに複雑な音環境の網の目をつくるべく組み立てられているけれども、これはサウンドデザインというよりも抽象的な映画音楽。


そして無生命の岩石・自然と人間の対比を際立たせるなら、女の肢体がさらに強調される必要があった気もする。




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