top of page
  • 2024年9月7日

俳優のブロッキングと編集でリズムを生み出して、それが文体として独立しているので、物語に依存しない、映画固有の形式があざやかに構築されている。 すばらしい才能で、濱口竜介さんに匹敵する新しい監督がこれほどすぐに登場するとは、まったく予想できなかった。


Desert of Namibia (2024) Yamanaka Yoko(山中瑶子『ナミビアの砂漠』)


ナラティブの回収をこころみる終盤の展開は意見が分かれるはずだけど、通俗への転落をぎりぎり回避してはいるかもしれない。 〈登場人物の狂気〉は要するに形をかえた夢オチにすぎないので、説得的に回収するのはもともと至難の業。ここは脚本上の瑕瑾。


主演の河合さんはたいへん見事。ひそひそっと口先で話す、勢いに乏しい今の日本語の発声にここまでリアリティを与えた例って他にあまり思い当たらない。 もっとも他の俳優がそれほどでもないのは、濱口式の独自の演技指導メソッドがあったわけではなく、属人的な化学反応のゆえなんだろうか。


近年の日本映画として文句なく最高の成果のひとつだけど、宣伝はちょっと的外れ気味。これは凡庸すぎる「都会の隅で格闘する若い女」物語ではなく、『PERFECT DAYS』や『パラサイト』のように映画としての形式面の完成をこそ見なければ。





筆者はブッシュ政権下でアメリカの中東政策形成に関与した一人で、今年の初めにはティラーソンに抜擢されて国防省へ…という噂が流れたこともあった。その筆者が語る「トランプ政権の外交政策は、結局のところこれまでの共和党政権と大きく変わらない」とする診断。まあこれまでを見るかぎり大して変わっていない(変えられなかった)のは確かだけど、今後もそうと断言する理由がよく分からない。

こちらは英国の王立国際問題研究所でディレクターをつとめる筆者による、国際情勢診断。中ロの台頭に加えトランプ政権の誕生で世界的にリベラリズムは危機にあるように見えるが、実際はそれほど心配する必要はなく、これから力強く復活するだろうと。ただしそのためには世界経済の成長維持が必要だから、たとえば中国の一帯一路政策に欧米もくわわって、どんどん投資せよと。なんだかお気楽な診断だと思う。

new yorker

これはなかなか素敵な記事。筆者が生まれた中西部の町を再訪し、そこで出会った小学校の教師や水道局の技師といった身近な人の話に耳を傾ける。テーマはアメリカの保険制度である。

彼らはごく善良な人たちで、身の回りの困っている人に手を差しのべることにはすこしも躊躇しない。

しかし勤勉で堅実な人生を送ってきた自分たちと比べて、一向に暮らしを立て直そうとしない怠惰な人々に、高額の健康保険が支出されていることに釈然としない思いも抱えている。

社会保障の光と影を、高いところからではなく街場の感覚から解きほぐしてゆく。まさに草の根の社会民主主義を地でゆく光景。日本の選挙戦でも、こういう議論があるといいと思う。


  • Instagram
bottom of page